認知症の予防には「よく噛んで食べること」が大切な理由

カラダコラム

噛むことと脳には密接な関係があります。脳を活性化するためにもよく噛んで食べることを心がけましょう。

私が目の当たりにした現実

昔、介護施設で調理補助のアルバイトをしていた時に出会ったおばあちゃん。
物腰も柔らかく上品な出で立ちで、いつも食事を残さず綺麗に食べてくれていたのですが、ある日を境におかずを刻んで盛り付ける「刻み食」への変更指示がありました。
それから一週間も経たないうちに、おかずをミキサーで細かくしてとろみをつける「とろみ食」へ移行になったので、少し気になり様子を伺うと、おばあちゃんの姿に以前の面影はありませんでした。
介護士の方に話を聞くと、咀嚼ができなくなってから一気に認知症が進んだとのこと。
噛むことは脳にとってとても大切なことであると、その時に痛感しました。

認知症専門医もよく噛むことを勧めている

高齢者の4人に1人は認知症という時代。
認知症専門医の長谷川嘉哉先生も認知症予防のためによく噛むことを勧めています。

噛むこと研究室「噛むことインタビュー」No.23 長谷川嘉哉先生より引用

歯の下には「歯根膜」というクッションのような器官があります。
物を噛むと歯は歯根膜に約30ミクロン(0.03㎜)ぐらい沈み込みます。
それによって歯根膜の下にある血管が圧縮され、ポンプのように血液を脳に送り込まれます。
ひとかみで送りこまれる血液の量は約3.5㎖。イメージとしては、お弁当についてくる魚の形の醤油入れとほぼ同量です。
噛むたびにお醤油入れくらいのの血液が脳に送り込まれると考えると、その重要性が感じられますよね。
また、血液が送り込まれることで脳は刺激を受けますから、噛めば噛むほど脳は活性化されるというわけです。

歯根膜と脳血流の関係
(出典)『脳の老化を止めたければ 歯を守りなさい!』(長谷川嘉哉/かんき出版)

逆に、歯の本数が少ないほど歯根膜にかかる圧力は減りますから、脳に送り込まれる血量は減ります。その結果、脳への刺激も減るので、脳の機能は低下してしまいます。

また、脳の中で動作を司る「運動野」と、感覚を司る「感覚野」のそれぞれ3分の1は、口と密接につながっています。つまり、口からの刺激が、脳の広い範囲に影響を及ぼすのです。

https://www.lotte.co.jp/kamukoto/brain/954

よく噛むことはストレス解消やうつ病にも効果的!?

幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」の分泌を意識的に増やすには、適度な日光浴が最も効果的ですが、他にも「リズム運動」が良いと言われています。

リズム運動とは!?
ウォーキングや自転車など、一定のリズムを繰り返す運動のこと。
日常生活では「咀嚼(そしゃく)」も一定リズムの運動として、脳内を刺激してセロトニンの分泌を増やしてくれると言われています。

ストレスは「ガムを噛むこと」で軽減できる!?
脳が不安を感じると交感神経が活発になり体にストレスがかかりますが、ガムを噛むことで血中のストレス物質の量が減ると言われています。

東京歯科大学特任教授の石上惠一が、咀嚼とストレス解消のメカニズムについて解説されています。

■噛むことで、前頭葉を活性化

注意力や集中力をつかさどる前頭葉は、加齢やストレスにより血流がだんだん低下していきます。前頭葉の血流が低下することは認知症、うつ病との関連があることもわかってきています。
最近の研究では、よく噛むとその刺激が脳の中心近くにある「海馬」という部分を活性化し、それが前頭葉にも伝わり、血流量を増やすことが明らかになっています。光トポグラフィ(近赤外光を使って大脳皮質機能を視覚化する機器)を用いて脳の状態を観察した実験では、ガム咀嚼を行うと20分程度で、前頭葉の大部分を占める前頭前野の血流が増加し、活性化することがわかっています。


科学研究費助成事業 研究報告書『ガム咀嚼はストレスを緩和する』 研究代表者 石上惠一

現代社会において、ストレスを全く感じずに生活することは不可能でしょう。重要なのは、ストレスとの付き合い方です。ストレスの軽減・発散についてあれこり考えるよりも、普段の生活から「噛むこと」を意識的に行うだけでも、ストレス軽減につながるといえるでしょう。

https://www.lotte.co.jp/kamukoto/brain/924

体の老化を止めることはできませんが、よく噛んで食べることで認知症のリスクを軽減できることは間違いなさそうですね。皆さんもよく噛むことを意識して、脳の活性化に努めましょう。





ブログ筆者/川上晶也

ブログ筆者/川上晶也

大阪の料理研究家。健康料理家。料理研究所『おとな食堂®』代表。著書『川上晶也のコロナに負けない健康レシピ手帖』(徳間書店)他、全10タイトル。

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